外交の基本はタカ派外交だ!
「ゲームの理論」というものがある。
2005年のノーベル経済学賞はヘブライ大学のロバート・J・オーマン博士とメリーランド大学のトマス・C・シェリング博士がこの「ゲームの理論の研究」により受賞した。ただしゲームの理論の創始者はこの二人ではない。
20世紀最大の天才と言われる、ハンガリー生まれのアメリカ人”ジョン・フォン・ノイマン”(1903~1957年)がその人である。アインシュタインは20世紀最大の天才ではないのである。その訳はノイマンは皆さんが今使っている
コンピューターを発明(そしてこのゲームの理論も)
したからである。
1998年の映画「ビューティフル・マインド」はゲームの理論を発展させた数学者:ジョン・ナッシュが統合失調症と闘った半生を描いたものである。
きっかけはチェスの必勝法の研究からなのであるが、現在では数学・経済学ばかりでなく政治学・生物学・経営学・心理学など幅広い分野に応用されている。わかりやすく言うとと「ゲームの理論」とは
相手の行動を考えながら、自分の利益が最大になる最善の方法を合理的・数学的に選ぶ学問
ということができる。
「囚人のジレンマ」「ナッシュ均衡」「チキン・ゲーム」などが有名であるが、今回は政治・外交では初歩中の初歩である「タカ派・ハト派理論」を取り上げてみる。なおゲームの理論は左翼にはえらく評判が悪い学問である。理由はこのハト派・タカ派理論を始めとしてゲームの理論自体が”対立の研究”だからと言う。”階級闘争・暴力革命”を標榜する左翼にしては如何かと思うが、これは誤解である。ゲームの理論には協調路線もあるし、互恵・調和に落ち着く理論もある。
さて本題に入る。
A国とB国があるとする。そして
ハト派外交:常に一歩引く
タカ派外交:常に強硬
と定義し、各々その選択肢があるものとする。
そして対戦のパターンを設定する。(”井森美幸さんに2000点!”:クイズダービーとはちと違うが・・・)
① A国・タカ派外交 B国ハト派外交(の場合)
A国:3万点(獲得) B国:0点(無得点)
② A国:ハト派外交 B国:タカ派外交
A国:0点 B国:3万点
③ A国ハト派外交 B国:ハト派外交
A国:2万点 B国:2万点
④ A国:タカ派外交 B国:タカ派外交
A国:1万点 B国:1万点
とする。
以上4パターン以外は考えられない。
各パターンを詳しく解説すると(すぐ理解できた方は読まないでもよい)
①は A国がタカ派外交(強硬路線)で望んだ場合・B国がハト派外交で(一歩引いて)応じた場合。A国が強くB国に要求し、B国がこれを承諾したということ。だからA国は3万点獲得し、B国は何も得られない(0点)。
②は、その逆の場合。A国0点・B国3万点獲得。
③はA国がハト派外交で臨み・B国が同じくハト派外交で応じた場合。双方に各2万点の利益をもたらしたということ。
④はA国がタカ派外交を展開し・B国も同じくタカ派外交で応じた場合。双方・傷み分けとなり大した利益もなく、ことが終わったということ。
ここで質問する。
あなたがA国の外務大臣であった場合・どっちの外交を最初に切り出すべきか!?
タカ派外交か?
ハト派外交か?
次にB国がどのような外交で応じるかを計算に入れて考えてほしい。
ただし各国は利己的に行動し・協調はしないものと考えるから、その中で最大限の得点を上げなければいけない(国民に利益をもたらさなければならない)。
答えは”タカ派外交”である。
たしかに(A国の外務大臣である)あなたがハト派外交を打ち出し・B国の外務大臣もこれにハト派外交で応じれば両国とも2万点の利益を得る。
しかし期待に反してB国がタカ派外交で応じてきた場合どうなるか!
A国:0点 B国:3万点
となる。
2万点よりも3万点のほうが大きい!
B国がわざわざ3万点獲得出来るのにそれを捨てて2万点を選ぶわけがないのである!
ということである。
”各国は利己的に行動する”というのがこの問題のポイントである。
つまりA国の外務大臣である・あなたは、まずは”タカ派外交”を打ち出し、B国がタカ派外交で対抗してきても最低限1万点の得点は確保できるということである。1万点で我慢するということ。
「現実・確実に獲得できる最大限の利益を選択する」
というのが”ゲームの理論の目的”であるからである。
”穴馬狙い”で甘い夢を期待してはいけないのである。
だから「タカ派外交」が正解!
日ごろから平和主義のお方には納得がいかないと思うが、数学的にそうなるのだから仕方がない。
個人の生活の場合も同じである。「仲良くしよう」と言ってくる者は何か下心を持って近づいてきているのだと思って間違いない。
だから日本の外交もタカ派外交を基本にすべきなのである。ただし現実の問題として弱小国が強大国に常にタカ派外交で挑んだとしてもうまくいかない場合も当然ある。そして一国の外交が常に隣の特定の一国のみを対象にすることは稀であり現実の外交はもっと複雑になる。今回のゲームの理論はあくまで外交の基本をシュミレーションしただけである。
ところが日本人は元来が平和主義者であるから、いきおい外交もハト派的になり勝ちである。だから中国・韓国から靖国問題などの無理難題を吹っかけられるとズルズルと譲歩してしまう。靖国など大した問題でないからと高を括っていると、いずれ尖閣列島・竹島・北方領土なども奪われてしまい大損害をこうむることになる。中国も韓国もちゃんとそれを計算に入れてムリを言っているのだ。
ゲームの理論は、孫子の兵法やクラウゼヴィッツの戦争論を現代的にスマートに分かりやすくしたものと言ってもいいだろう。
だから中国は昔から外交が巧みで・常にタカ派外交なのである。
日本政府も外交の基本に戻るべきである!
今回はゲームの理論の初歩を述べたに過ぎない。社会生活を送る上で相手の提案に乗らざるを得ない場合もある。そのときは保険や罰則を設けてリスクを回避せよとゲームの理論は教えている。最近は”オレオレ詐欺”などが増えている。相手を信用するのは美徳かもしれないが、世界には詐欺師も”ならず者国家”もあることをこのゲームの理論から学んでほしい。
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コメント
どうも3ヶ月も前の記事をお読みいただきありがとうございます。
ウイキペディアでも
ノイマンについて
「現在のコンピュータの基礎を築いた功績者」
モルゲンシュテルンについても
「ノイマンの生み出したゲームの理論の重要性を・・・」
河出書房の「ゲーム理論の愉しみ方」の訳者あとがきでも
「ゲーム理論は、1940年代にジョン・フォン・ノイマンがチェスなどの室内ゲームで勝つための戦略を考察して理論化したところからはじまった」
とありますから間違いではありません。
20世紀最大の天才かどうかは主観的な問題ですので見解の違いです。
投稿: 柳生すばる | 2006年11月13日 (月) 01:44
ノイマンはコンピュータの発明者ではありません。また、ゲーム理論についてもノイマンが素地を作ったのは確かですが、モルゲンシュテルン等の人々によって発展したものです。
また、20世紀最大の天才というのも疑問です。どちらかというと、つまみ食いの天才といった人物に思います。科学に対しての、「コレは金になる」、「コレは今後おおきく発展する」といった嗅覚については20世紀といわず史上最大の天才と言ってもいいと思いますが…。光電効果、相対性理論といった成果に比べると、どうかなと…。
投稿: ちがいます | 2006年11月12日 (日) 21:11